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名義預金が相続財産と認定された過去の判例

2025/7/23

相続税申告

以下に、名義預金が相続財産と認定された国税不服審判所の裁決事例・税務訴訟の要約を3件ご紹介します。すべて実務で参考になる論点を含んでいます。


✅ 裁決事例①:配偶者名義の預金(実質的な管理は被相続人)

裁決番号:裁決事例集 No.60 所収

概要:
被相続人が妻名義で定期預金を複数保有。
すべての通帳と印鑑を被相続人が保管・管理しており、
預金の原資も全て被相続人の収入。

主な争点:
妻名義の預金が、贈与により妻に帰属するものか、それとも被相続人の財産か。

審判所の判断:
妻は預金の存在を把握しておらず、通帳も管理していなかった。
贈与契約も存在せず、贈与税の申告もされていなかった。
→ 名義預金と認定され、相続財産に加算


✅ 裁決事例②:子供名義口座への定期的な振込(形式的贈与)

裁決番号:平成29年3月7日(裁決事例集未収録、要約)

概要:
被相続人が、生前に子供3人の名義で毎年110万円を振込。
通帳と印鑑は本人が保管し、子供は預金の存在を知らなかった。

主な争点:
暦年贈与として非課税財産か、それとも相続財産(名義預金)か。

審判所の判断:
「贈与の事実的証拠がなく、贈与者の管理下にあった」として、
贈与の成立を否定。
→ 相続財産として課税処分が維持


✅ 判例③:贈与契約書があっても管理実態で名義預金と判断(東京地裁)

事件番号:東京地裁 平成27年(行ウ)第89号

概要:
贈与契約書を作成していたが、口座の通帳・印鑑は贈与者(被相続人)が保有し、
入出金もすべて本人が行っていた。

主な争点:
贈与契約の形式があれば贈与成立といえるか。

裁判所の判断:
「形式的な契約書の有無にかかわらず、
実質的な支配管理関係が被相続人にある場合は名義預金とみなされる」として、
→ 課税処分を適法と認定


🔍 実務への示唆

  • 通帳・印鑑・ATMカードの実際の管理者が誰かが重要
  • 贈与契約書があっても、形式的なものでは不十分
  • 贈与税の申告の有無や、受贈者による預金の認識・使用状況がカギ

税理士・福間より

過去の判例をみても、もらった本人がお金を管理していて本人の意思で自由に使える
状況にあったか?という事が判断の基準になるようですね。
子供に渡すと使ってしまうから、と贈与の形式をとっても実際は親が管理していると
名義預金とされる可能性が高くなりますので注意しましょう!