
親から子へ、祖父母から孫へ。生前に少しずつ財産を渡しておくことで、将来の相続税を軽くできる——これが「生前贈与」による相続税対策の基本です。
ただし、2024年(令和6年)の改正で贈与のルールは大きく変わりました。福岡で「これから相続に備えたい」と考える方に向けて、暦年贈与と相続時精算課税の違い、どちらを選べばよいか、改正で何が変わったのかを、できるだけかみ砕いて整理します。最後に、福岡の一般的なご家庭が無理なく始めるための進め方もご紹介します。
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生前贈与が福岡の相続税対策になる理由
相続税は、亡くなった方が遺した財産の総額が大きいほど高くなります。そこで、生きているうちに財産の一部を子や孫へ渡しておけば、将来相続税の対象となる財産そのものを減らせる、というのが生前贈与の考え方です。
福岡では、天神・博多周辺をはじめ近年の地価上昇で、これまで相続税とは無縁だったご家庭でも課税対象になるケースが増えています。「現金は多くないが、自宅や実家の不動産がある」という福岡らしい財産構成では、早めに対策を始めるほど選べる手段が広がります。福岡の相続税の全体像は、福岡の相続税ガイドでも解説しています。
なお、生前贈与には贈与税がかかります。贈与税と相続税は別の税金で、税率の仕組みも異なります。両者の関係は「相続税」と「贈与税」の違いとは?で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
生前贈与のほかにも、生命保険を使った相続税対策(非課税枠500万円×法定相続人)など、福岡の一般家庭でも取り入れやすい方法があります。複数の対策を組み合わせるのが基本です。
暦年課税と相続時精算課税の違い
贈与税の課税方法には、暦年課税(暦年贈与)と相続時精算課税の2つがあります。生前贈与で相続税を減らすうえで、まずはこの違いを押さえることが出発点になります。
暦年課税(暦年贈与)とは
暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与について、年110万円の基礎控除を差し引いた残りに贈与税がかかる方式です。誰から誰への贈与でも使えます。年110万円以内であれば贈与税はかからず、申告も不要です。「毎年110万円ずつ、コツコツ渡していく」という、もっとも一般的な方法です。
相続時精算課税とは
相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について選べる制度です。累計2,500万円までの特別控除があり、その範囲なら贈与税はかかりません。ただし、贈与した分は最終的に相続財産に合算して相続税を計算する仕組みです。
一度この制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。まとまった財産を早く渡したい場合に向きますが、選択は慎重に行う必要があります。
| 項目 | 暦年課税(暦年贈与) | 相続時精算課税 |
| 基礎控除 | 年110万円 | 年110万円(2024年新設) |
| 特別控除 | なし | 累計2,500万円 |
| 使える人 | 制限なし | 60歳以上の親・祖父母→18歳以上の子・孫 |
| 税率(控除超過分) | 10〜55%の累進 | 一律20% |
| 暦年課税への変更 | — | 一度選ぶと戻せない |
どちらが有利か
一般論としては、早くから毎年贈与できる方は暦年課税、高齢になってから贈与を始める方は相続時精算課税が有利になるケースもあります。
2024年(令和6年)改正のポイント
2024年(令和6年)の改正は、生前贈与による相続税対策に大きく影響します。ポイントは2つです。
① 生前贈与加算が3年→7年に延長
暦年贈与には「生前贈与加算(持ち戻し)」というルールがあります。贈与者が亡くなる前の一定期間にした暦年贈与は、たとえ年110万円以内でも相続財産に加算して相続税を計算する、という仕組みです。
この対象期間が、従来の相続開始前3年以内から7年以内に延長されました。延長された4年分(3年超〜7年以内)については、合計100万円を差し引いて加算します。
ただし、すぐに7年分すべてが対象になるわけではありません。改正は2024年1月1日以後の贈与から段階的に適用され、相続が発生したタイミングによって加算される期間が変わります。
| 相続が発生した時期 | 加算される期間 |
| 2026年(令和8年)12月31日まで | 従来どおり3年 |
| 2027年(令和9年)〜2030年(令和12年) | 段階的に延長(最長4〜7年) |
| 2031年(令和13年)1月1日以降 | 7年(フル適用) |
暦年贈与は「早く始めて、長く続ける」ほど持ち戻しの影響を受けにくくなります。対策を先延ばしにしないことが、これまで以上に大切になりました。
② 相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設
もう一つの改正が、相続時精算課税への年110万円の基礎控除の新設です。2024年1月1日以後の贈与から、累計2,500万円の特別控除とは別に、毎年110万円までの基礎控除が使えるようになりました。
この110万円以下の贈与は、贈与税の申告が不要なうえ、相続財産への持ち戻しも不要です。暦年贈与の110万円が7年加算の対象になるのに対し、相続時精算課税の110万円は加算されません。この点で、贈与を始める時期が遅めの方には精算課税が有利になる場合があります。
どちらが得かは、贈与する側の年齢、財産の総額、贈与を受ける人数などによって変わります。「贈与税と相続税のどちらが得か」を単純な早見表だけで判断するのは難しく、ご家庭ごとのシミュレーションが欠かせません。
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福岡の家庭での始め方と注意点
福岡の一般的なご家庭が無理なく始めるなら、まずは暦年贈与で「年110万円以内を、毎年、計画的に」が基本の形です。そのうえで、次の点に注意してください。
「名義預金」とみなされない贈与にする
子や孫名義の口座にお金を移しても、通帳や印鑑を親が管理したままだと、贈与と認められず「名義預金」として相続財産に戻されてしまうことがあります。贈与契約書を残す、受け取る側が自分で口座を管理する、といった実態づくりが重要です。名義預金の判断基準は名義預金の判断基準で詳しく解説しています。
毎年の贈与は証拠を残す
贈与は「あげる・もらう」の合意があって成立します。口頭だけでなく、毎年その都度、贈与契約書を作成し、銀行振込で記録を残すと安心です。福岡国税局管内でも、贈与の実態は税務調査で確認されやすいポイントです。
不動産の生前贈与は慎重に
自宅や実家など不動産の生前贈与は、登記費用や不動産取得税がかかるうえ、相続時精算課税で贈与した土地には小規模宅地等の特例(自宅の土地を最大80%減額できる制度)が使えなくなる点に注意が必要です。同居する子への自宅の生前贈与を考える場合は、実家を同居している子に生前贈与する場合の注意点もあわせてご確認ください。
「誰に」「いつまで」渡すかを考える
配偶者へ多く遺すと、その配偶者が亡くなる二次相続で相続税が膨らむことがあります。生前贈与も、一次相続・二次相続の両方を見据えて「誰に渡すか」を決めるのが得策です。考え方は二次相続まで考えた福岡の自宅相続で解説しています。
専門家に相談すべきケース
次のような場合は、自己判断で進める前に税理士へ相談することをおすすめします。
- 暦年贈与と相続時精算課税のどちらを選ぶか迷っている
- 不動産や自社株など、現金以外の財産を贈与したい
- 贈与する側がすでに高齢で、7年加算の影響が心配
- 財産の総額が大きく、相続税がいくらかかるか見当がつかない
生前贈与は、やり方を誤ると「節税のつもりが、かえって税負担が増えた」という結果になりかねません。具体的な贈与プランは、ご家庭の状況に合わせて専門家と一緒に組み立てるのが安全です。
まとめ
- 生前贈与は、将来の相続財産を減らせる福岡の家庭でも取り入れやすい対策です。
- 贈与税には暦年課税(年110万円)と相続時精算課税(年110万円+累計2,500万円)の2つがあります。
- 2024年(令和6年)改正で、暦年贈与の生前贈与加算は3年→7年に延長されました(段階適用)。
- 相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設され、この分は相続財産に持ち戻されません。
- 名義預金とみなされないよう、契約書・振込記録など贈与の実態を残すことが大切です。
- どちらが有利かはご家庭ごとに異なります。迷ったら早めに専門家へ。
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| ※本記事は2026年時点の情報をもとに、暦年課税・相続時精算課税など生前贈与に関する一般的な内容を分かりやすくまとめたものです。制度の数値・要件・期限は改正により変わる場合があります。実際のお取り扱いは、国税庁などの最新情報をご確認のうえ、税理士への個別相談をおすすめします。 |
・福間税理士事務所、ふくおか相続税相談室 ほっと!代表。
・ 1977年10月5日生 福岡市出身
・保有資格:税理士、行政書士
