
福岡で賃貸アパートや貸家を所有していた方が亡くなると、その土地と建物にも相続税がかかります。ただ、人に貸している不動産は「自分で自由に使えない」ぶん、自分で使っている土地・建物として評価する場合より、相続税評価額が低くなる仕組みがあります。これが貸家建付地(かしやたてつけち)の評価減です。
この記事では、福岡で賃貸物件を持つオーナー・相続人の方に向けて、貸家・貸家建付地の評価が下がる理由と計算の考え方、空室があるときの扱い、福岡の賃貸エリアでの実務上のポイントまでを、税理士監修のもとで分かりやすく解説します。
結論を先にお伝えすると、第三者に適正に賃貸している不動産は、要件を満たせば貸家・貸家建付地として評価減を受けられます。ただし、空室の扱いや賃貸の実態、特例の併用で結果が変わるため、最終的な判断は税理士に確認するのが安心です。
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貸家・貸家建付地とは
貸家とは、第三者に貸している建物のこと。貸家建付地とは、その貸家が建っている土地のことです。読み方は「かしやたてつけち」です。
賃貸アパートやマンション、戸建ての貸家を相続した場合、入居者には借家権(建物を借りて住み続けられる権利)があります。所有者であっても入居者を簡単に退去させられないため、土地・建物を自由に使えません。この利用の制約があるぶん、相続税の評価額が下がる、という考え方です。
逆に、同じ土地でも青空駐車場やコインパーキングは、原則として貸家建付地にはなりません。貸家の敷地として利用されているわけではなく、駐車場の利用者に借家権が生じるものでもないためです。ただし、賃貸アパートの入居者専用駐車場で建物と一体で使われている場合は、貸家建付地として評価できることがあります。
貸家建付地・貸家の評価減の計算
貸家建付地の評価額は、次の式で計算します(国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」)。
貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
「自用地評価額」とは、その土地を更地として自分で使う場合の評価額です。路線価のある地域では、路線価に各種補正と土地の面積をかけて求めます。路線価の調べ方は福岡市の路線価で相続税評価額を調べる方法でくわしく解説しています。
式に出てくる3つの割合は、それぞれ次のように決まります。
- 借地権割合:国税庁の路線価図に、路線価の数字の末尾にA〜Gのアルファベットで示されています(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。利便性の高いエリアほど高くなる傾向があります。
- 借家権割合:令和7年分の福岡県財産評価基準書では、100分の30、つまり30%とされています。借家権割合は年分・地域ごとの財産評価基準書で確認します。
- 賃貸割合:建物全体のうち、相続が発生した時点で実際に貸している部分の床面積の割合です。満室なら100%になります。戸数ではなく、原則として床面積で計算します。
建物(貸家)の評価額も同じ考え方で下がります。式は次のとおりです。
貸家の評価額 = 建物の固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
建物の固定資産税評価額は、毎年春に届く固定資産税の課税明細書で確認できます。
イメージをつかむため、福岡市内の物件で概算のモデルケースを見てみましょう(数値は説明のための仮定です。実際の評価は税理士にご確認ください)。
| 項目 | 条件(仮定) |
| 土地の自用地評価額 | 6,000万円 |
| 借地権割合 | 70%(路線価図でCの地域) |
| 借家権割合 | 30%(全国一律) |
| 賃貸割合 | 100%(満室) |
| 建物の固定資産税評価額 | 3,000万円 |
このとき、土地(貸家建付地)の評価額は、
6,000万円 ×(1 − 0.7 × 0.3 × 1.0)=6,000万円 × 0.79 = 約4,740万円
となります。
更地として使う場合より約1,260万円、おおよそ21%下がります。
建物(貸家)の評価額は、
3,000万円 ×(1 − 0.3 × 1.0)= 約2,100万円
となります。
固定資産税評価額より900万円下がります。
このように、賃貸中の不動産は特別な手続きをしなくても一定の評価減が受けられます。さらに、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例(貸付事業用)を併用して、200㎡まで土地の評価額をさらに50%下げられる場合があります。要件や注意点は【貸付用】福岡のアパート・駐車場の小規模宅地等の特例で解説しています。
空室・一時的空室の扱い
賃貸割合は「相続が発生した時点で実際に貸している床面積の割合」です。そのため、空室があるとそのぶん賃貸割合が下がり、評価減も小さくなります。
たとえば全6室・各室の床面積が同じアパートで、相続発生時に1室が空室なら、賃貸割合は5/6でおよそ83%です(床面積が室ごとに異なる場合は床面積で計算します)。空室が多いほど評価減は小さくなる、という関係です。
ただし、すべての空室で評価減が減るわけではありません。「一時的な空室」と認められる部分は、賃貸中の床面積に含めて計算してよいとされています(国税庁の質疑応答事例「貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲」)。一時的な空室にあたるかは、次のような事情をもとに総合的に判断されます。
- その部屋がそれまで継続的に賃貸されてきたか
- 入居者の退去後、すぐに新しい入居者の募集を始めたか
- 空室の期間が、相続開始の前後を通じて一時的な期間にとどまっているか
- その間、空室を別の用途(自分の物置など)に使っていないか
言い換えると、長期間ずっと空いていた部屋や、募集を止めていた部屋は、一時的な空室として認められにくくなります。一時的な空室として扱うには、募集をかけていた広告やサイトの記録、入退去の時期が分かる契約書などを残しておくと、後の説明がスムーズです。
福岡の賃貸物件での実務
福岡市は人口が増え続けている都市で、天神・博多・薬院・百道浜・西新、近年はアイランドシティ(東区)など、エリアによって賃貸需要や地価の水準が大きく異なります。地価は近年上昇傾向で、中央区や博多区など福岡市中心部では、地価公示や路線価でも上昇傾向が見られます。
評価の面で押さえておきたいのは、借地権割合の高いエリアほど、貸家建付地としての評価減が相対的に大きくなるという点です。福岡では、天神・博多駅周辺などの商業性が高い地域で借地権割合が高め(おおむねC〜Aの70〜90%)、住宅地ではD〜Cの60〜70%程度のことが多い傾向があります。ご自身の物件の借地権割合は、必ず最新の国税庁 路線価図・評価倍率表で確認してください(路線価は毎年7月に公表されます)。
分譲マンションの一室を貸している場合は、評価の順番に注意が必要です。2024年(令和6年)1月以降に取得した居住用の区分所有マンションは、まず新しいルール(区分所有補正)で評価したうえで、貸家建付地・貸家の評価減を適用する流れになります。新ルールの中身は福岡のマンションの相続税評価|2024年の新ルールでくわしく解説しています。
福岡で賃貸経営を続けながら相続税対策を考えたい方は、福岡の不動産オーナーの相続税対策|賃貸経営・法人化・生前贈与もあわせてご覧ください。
注意点
最後に、評価を進めるうえで間違えやすい点を整理します。
- 駐車場は原則として評価減の対象外です。青空駐車場やコインパーキングは貸家建付地になりません。一方、賃貸アパートの入居者専用駐車場は、建物と一体で使われていれば対象になる場合があります。
- 社宅や、相場とかけ離れた低額・無償で貸している建物は、貸家建付地と認められず、評価減が使えないことがあります。賃料が世間相場並みであることがポイントです。
- 賃貸割合は相続発生時点の実態で決まります。亡くなる直前にあわてて入居者を増やしても、実態が伴わなければ認められないことがあります。
- 小規模宅地等の特例(貸付事業用)の併用には、相続開始前3年より前から賃貸を続けているなどの要件があります。詳しくは貸付用の小規模宅地等の特例の記事をご確認ください。
評価減を「行き過ぎた節税」として後から否認されるケースもあります。賃貸割合の算定や特例の適用可否は、物件の構造や賃貸状況など個別の事情によって判断が変わるため、自己判断は避け、相続税にくわしい税理士に確認することをおすすめします。
まとめ
- 人に貸している不動産は、貸家建付地・貸家として相続税の評価額が下がります。
- 計算は「自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)」が基本。借家権割合は、令和7年分の福岡県では30%です。年分・地域ごとの財産評価基準書で確認します。
- 空室があると賃貸割合が下がり評価減も小さくなりますが、募集中の一時的な空室は賃貸中に含められる場合があります。
- 福岡では借地権割合の高いエリアほど評価減が大きくなりやすく、分譲マンションは2024年の新ルールにも注意が必要です。
- 小規模宅地等の特例の併用や否認リスクの判断は、税理士への確認が安心です。
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| ※本記事は2026年6月時点の情報をもとに、一般的な内容を分かりやすくまとめたものです。制度の数値・要件・期限は改正により変わる場合があり、記載の税額・評価額はモデルケース(概算)です。実際のお取り扱いは、最新の一次情報のご確認と、税理士への個別相談をおすすめします。 |
・福間税理士事務所、ふくおか相続税相談室 ほっと!代表。
・ 1977年10月5日生 福岡市出身
・保有資格:税理士、行政書士

